

今月のイチオシ!
スクリームクィーンズ
今月の怖面!
スペシャル
![]()
『悪魔の棲む家』で呪われた家に越してくる一家の母親役を熱演していたマーゴット・キダー。日本では何と言ってもクリストファー・リーヴ版『スーパーマン』シリーズのロイス・レイン役でお馴染みですよね。女優としての出世作がブライアン・デ・パルマ監督の『悪魔のシスター』('73)。その他、『暗闇にベルが鳴る』('74)、『リーインカーネーション('75)、『ミッドナイト・スクリーム』('98)、『ダークサイド』('00)などにも出演していて、ホラー&ファンタジー映画にはとても縁の深い女優さんです。
ただ、どうしてもロイス・レイン役のインパクトが強すぎて、それ以外でこれといった代表作に恵まれていないのも事実。というよりも、それ以外の仕事がなかなか正当に評価されていない、といった方が正しいかもしれませんね。初期の作品で言うならば、『地獄の殺戮都市』('74)なんかもっと評価されるべき作品だろうと思います。アイルランドを舞台に、市民の生活に根深く浸透したテロリズムを緊迫感溢れるサスペンス・タッチで描いた作品で、マーゴットは悲劇的な運命を辿る一卵性双生児の姉妹を大熱演しています。そうかと思えば、同じくアイルランドを舞台にしたコメディ“Quackser Fortune Has a Cousin in the Bronx”('70)では、カナダからやって来た小悪魔的な留学生役で登場。町の人々からバカにされている糞尿汲みの主人公(ジーン・ワイルダー)を翻弄する、自由奔放な女性をのびのびと大らかに演じていました。
初期のマーゴットは、その彫りの深い容姿のせいか陰のある暗い役が多かったように思います。『悪魔のシスター』なんかは、そのイメージを最大限に引き出した傑作だったわけですが、ロバート・レッドフォードの恋人役を演じた『華麗なるヒコーキ野郎』('75)では、女性パイロット役のスーザン・サランドンに完全に食われちゃってましたね。『リーインカーネーション』でも、なぜか主人公マイケル・サラザンの母親という老け役で、こちらもヒロイン、ジェニファー・オニールの引き立て役みたいになってました。ただ、『暗闇にベルが鳴る』のバービー役は良かったですね。毒舌トークを繰り広げる皮肉屋の女子大生という役どころは、彼女のハスキーな声にピッタリでした。
素顔のマーゴットも、このバービー役にかなり近い女性みたいです。『暗闇にベルが鳴る』で共演したジョン・サクソンは、下ネタや毒舌ジョークを連発して現場を盛り上げるマーゴットのことを絶賛していましたし。そもそも、ハリウッドでは彼女のことを悪く言う人がいないんです。共演者や現場スタッフからは、とても愛される女優さんだったみたいですね。『スーパーマン』のリチャード・ドナー監督が、いろいろと私生活で不幸が重なって自己破産してしまった彼女を『マーヴェリック』('94)で起用したりしたのも、そうした長年の友情があってこそだったのだろうと思います。その気風の良い性格も有名で、ブライアン・デ・パルマ監督と同棲していた無名時代には、二人のアパートに転がり込んだロバート・デ・ニーロやマーティン・スコセッシの食事や洗濯の世話などもしていたといいます。
そう、彼女はその交友関係にも興味深いものがあるんですよね。カナダからハリウッドにやって来たばかりの60年代半ば、彼女と大親友になったのが『悪魔のシスター』でも共演した女優ジェニファー・ソルト(現在はテレビ『NIP/TUCK』のプロデューサー)。当時二人が身を寄せていたビーチ・ハウスには映画界を志す若者が集まってきていて、スピルバーグやスコセッシ、スーザン・サランドン、ハーヴェイ・カイテルといった面々と共に寝食を共にしていたとのこと。デ・パルマと知り合ったのも、このコミュニティーだったんですね。そう考えると、彼女は60年代末のヒッピー・カルチャーが生み出した、いわば時代の申し子的存在の一人だったわけです。
一時は極度の鬱病で仕事が出来なくなってしまい、自分の命が狙われているという強迫観念から行方をくらましてしまったこともあるマーゴット。現在ではすっかり完治し、年に2~3本の映画出演をコンスタントにこなすまでに。TV『ヤング・スーパーマン』ではクラーク・ケントを見守る女性科学者ブリジット・クロスビー役で登場。『スーパーマンⅢ/電子の要塞』('83)でラナ・ラング役を演じたアネット・オトゥールと21年ぶりの再共演を果たしています。
1948年10月17日、カナダ・マッケンジー州生まれ。