5月16日 GBHトークショー付試写会
門間雄介さん(ライター、編集者)×兵藤育子さん(ライター、編集者)

05.29(木)

140527_0.jpg

―映画の感想
兵藤さん)初めて観た時は展開がすごく速いから、与えられるままに(笑)観る感じでしたが、2回目の今日は隅々まで観ることができました。何度観ても楽しめる作品ですね。

―特に印象的だったこと
兵藤さん)時代によってスクリーンサイズが変わることですね。初めてみた時も良い意味で違和感がありましたが、奥行きを上手く使っているんだなーと、改めて面白く興味深かったです。
門間さん)きっとお金もかかるし、スタジオ的にはもういいよ、そこまでこだわらなくてもいいんじゃないか?っていう事なのに、それでもやってしまう所が完璧主義者のウェスらしさが表れていますね。
兵藤さん)構図でいうと、『ダージリン急行』の時もそうだったけど、横にスライドするところが面白いですよね。
門間さん)ホテルを真正面から撮った時のミニチュアを使った箱庭感、『ファンタスティックMr.FOX』でストップモーションアニメーションをやったことで彼が気に入って取り入れているんだと思うんですけど、今までやってきた事にそれを加えているところが新しいと思いました。

―架空の国スブロフカは東欧が舞台になっています。
旅雑誌の編集をやられている兵藤さんから見ていかがでしたか。

兵藤さん)ウェスは、イメージとしての東欧、っていうのを作るのがうまいなぁと思いました。『ダージリン~』の時もイメージとしてのインドですよね。実際、あの列車はないじゃないですか。インドっぽい雰囲気を作るのがすごく上手い。今回も東ヨーロッパの重厚な感じがすごく出ていると思いました。ヨーロッパに憧れて、アメリカ人が作った映画です。だから隅々まで。
門間さん)このホテルもじつはドイツのデパートを改装して撮影をしているんですよね。ホテルのインテリアなんて、壁紙からエレベーターやら食器やらって・・・もうそこまでよくやりますよね!(笑)
資料にありましたが、ドイツ人の映画監督エルンスト・ルビッチが撮った『生きるべきか死ぬべきか』もモチーフになっていて、インスパイアされているそうです。 ウェスはひとつだけのものではなくて、いくつものモチーフを積み上げていく作業して作っている気がします。

―音楽について
門間さん)今までの作品は既成のブリティッシュ・ロックを使用することが多かったけど今回はオリジナルスコアでしたね。そこも今までとちょっと違う。音楽もロックを使わないアダルトな雰囲気がありましたね。イギリスの60年代ロックが一番好きなんだと思うんです、ウェスは。この人は、映画を作るっていうより音楽を作るような感覚で作品を作っているんじゃないかなぁって思うんです。

―本作の新境地
門間さん)音楽っぽいと言ったのは、ストーリーを物語るよりも、あるひとつの情感をみせる、エモーションを大事にして撮っているんじゃないかと思うんです。今回は、ラストシーンの今まであまり無かった「哀愁」のあの情感を特に作りたかったんじゃないかなと思いました。スクリューボールコメディでありつつ、ゼロの成長物語(『スラムドックミリオネア』的なサクセスストーリー)のミクスチャーといった感じ。ここに新しさを感じます。
兵藤さん)なるほど。アメリカにはない、戦争の影もヨーロッパの歴史ある重厚さも繋がりますね。
門間さん)あと、時代でいうと4層構造に分かれていて、なんでここまで複雑な構造にしたのかよくわからなかったけど、1930年代から現代にいたるまで脈々と語りつがれているんだ、っていう、ものづくりをする人に対するリスペクトが含まれているんだと思う。ウェス自身の自負もそこにはあるんだという。そう考えるとより感慨深い作品でした!